先祖を祀る

七七日(なななのか)法要と十三仏

東光院萩の寺住職 村山廣甫

お釈迦さまが悟りを開かれたのは、「諸行無常」という問いかけから始まっているというのは、有名な話です。生きとし生けるものは有限の“生命(いのち)”を生きています。不変のものなど何一つありません。私たちにとって“生”も日常なら“死”もまた日常なのです。その日常である“死”をしっかり「見送る」ことができるなら、残された私たちの“生”もまた、一段と輝いてくるはずです。

そのためにも、この世に思いを残していった故人にとっても、悲しみの中に残された遺族にとっても、「四十九日」という時間は必要です。今在る“生”をより確かなものとして生きていくためにも、私たちにとって一つの日常である“死”を理解する──仏事法要は、仏さまの行事であり、壮大な先祖の知恵でもあるのです。

中陰(ちゅういん)──四十九日間で転生(てんしょう)

仏教では、生き物が受胎して生まれてから、次に再び生まれてくるまでに、「四有(しう)」という四つのプロセスがあると説いています。

生有(しょうう)…受胎した瞬間
本有(ほんう(ぬ))…生を受けてから死ぬまでの間
死有(しう)…死の瞬間
中有(ちゅうう(ぬ))…死んでから次の生を受けるまでの間

“中有”は、「中陰(ちゅういん)」とも呼ばれ、この間に故人の霊(みたま)は、冥土(めいど)の裁判官によって、七日目ごとに七回の裁きを受け、四十九日目(満中陰(まんちゅういん))に、最後の審判が下されるといわれます。これを俗にいう「輪廻転生(りんねてんしょう)」といいます。「四十九日で家の棟を離れる」わけです(116ページ)。

この中陰の考え方は古代インドの生命の輪廻観──六道輪廻(ろくどうりんね)に基づいたものであることはいうまでもありません。

そこで、この七日目ごとに、仏事を営んで亡くなった方を供養し、その功徳によって、少しでもよいところに生まれ変わってほしいと願って行う「中陰法要」、俗にいう七七日(なななのか)法要が大切なのです。したがって、法事のうちでも、この中陰法要と、それ以後の法要とでは、意義も大きく変わります。

一周忌以降は、四十九日間さまよっていた亡き人の霊も、それぞれの世界に生まれ変わり、力強く歩み始めているわけで、お経の功徳も、転生された霊の歩みに対する、激励の意味をもってきます。

お葬式の後、初七日に始まり、七七日忌、百力日忌、一周忌、三回忌とつながっていく仏事法要には、それぞれ意義、由来があります。亡くなった方の霊は、十三の仏さまに代わる代わる導かれて修業し、「ご先祖さま」の仲間入りをされていくのです。初七日から四十九日までは、七日ごとに導いてくださる仏さまが代わります。残された遺族もこの期間は喪に服して、亡くなった方の供養を行うことが大切です。

十三仏とその役割

七日目ごとに忌日、命日を迎える新亡霊位(しんもうれいい)の追善のため、その審判官である王(王は仏の化身(けしん))と、その本地(ほんぢ)の仏さまとを礼拝・供養して、その冥福をお祈りするのが、「十三仏」と呼ばれる信仰です。四如来・一明王・八菩薩の十三の仏さまは、亡き人の精霊を救うために努力されると、『十三仏抄』にあります。十三王と、その本地十三仏の役割、いわば十三人の裁判官とその正体をご紹介しましょう(次ページ)。

このうち、初七日(しょなのか)、五七日(いつなのか)(三十五日)、七七日(なななのか)(四十九日)の法要は特に大切です。初七日は初めての忌日でもあり、早く善処に赴いてほしいという願いから、また、五七日はちょうど「閻魔王(えんまおう)」の審判の日のあたるから、さらに、七七日は最後の日で、これを終えて死者は初めて一応の仏門の修行が終わったことになるからです。七七日(四十九日)が遺族にとって「忌明け」になるのもこのためです。

『具舎論(くしゃろん)』『瑜伽師地論(ゆがしちろん)』によれば、中有にある間の死者の霊は、香を食とするところから健達縛(けんだつば)(ガンダルヴァ=食香(じきこう))、また、次に生まれるところを求めているので「求生(ぐしょう)」とも名付けられています。中陰の間、お香を絶やさないように務めるのはこのためです。「巻線香」は、そのために便宜上、考案されたものです。

初月忌のお寺参り

中陰の間に、故人となられた方の一月日(ひとつきめ)の命日がきます。これを「初月忌(しょがっき)」といいます。およそ「お戒名」を授かるには、本来は菩提寺のご本堂の須弥壇(しゅみだん)で、「お授戒(じゅかい)」の儀式を受けて、自分の師匠である、ご住職の「血脈(けちみゃく)」を授かるのが正式です。

これを「お授戒会(じゅかいえ)」といって、聖道門(しょうどうもん)と呼ばれる宗派では、最重要の儀式の一つとなっています。このお授戒会で、仏さまの戒律を受けいれて、仏弟子となったとき、お戒名が、お血脈とともに授けられます。その意味で、葬儀式をお寺の本堂で営むことは、お葬式としては最も理想的です。ご先祖をお守り下さっているご本尊さまのもと、そのお寺のご住職によってお授戒が営んでいただけるから、これ以上の葬儀祭場はありません。これを俗に「寺式(てらしき)」の葬儀と呼んでいます。しかし、菩提寺が遠隔であったり、友人・知人の会葬の都合や、お葬式の規模などにより、現実には、自宅や会館でのお葬式が増えています。この場合には、葬儀式に大切な菩提寺のご本尊さまや、お位牌堂でおまつりされている先輩たるご先祖さま方に、掌を合わせて礼拝したり、供養させていただく機会はありません。その意味で故人の初めての命日である初月忌に、ご本堂にお参りして、ご回向(えこう)をいただくことは大切です。新亡霊位が、今後とも、ご本尊さまにお守りしていただくのをお願いするとともに、中陰が満ちたあとは、今までお位牌堂でおまつりされている、諸先輩霊位の仲間入りをさせていただくためのご挨拶として、ご本堂須弥壇を荘厳(しょうごん)し、ご回向をちょうだいするのです。

菩提寺の須弥壇は、新亡霊位にとっては、お戒名の源(みなもと)としての戒壇です。

この初月忌のお寺へのお参りは、宗旨の安心(あんじん)と、檀信徒としての絆を確認し、み仏のご加護を知る大切な機会です。

お参りの時間やお供え物などは、菩提寺のご指導をお願いしましょう。

満中陰が過ぎた二月目(ふたつきめ)の命日からは、「月参(つきまい)り」が始まります。今度はお坊さまが、新亡霊位のもとへお参りされるのです。

※浄土宗では五重相伝にあたる
合掌
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