先祖を祀る

ご本尊を迎える

東光院萩の寺住職 村山廣甫

寺院の境内の中心を占める本堂には、その寺院の属する宗派によって定められた、特定のお仏像や掛軸、曼荼羅(まんだら)が、信仰対象として安置され、おまつりされています。これをご本尊といいます。

お仏壇は、各家庭の小さなお寺ですから、菩提寺あるいは自己の信仰する宗派のご本尊を、やはりお仏壇の中央上段におまつりするのです。もっとも、特別の歴史をもっているお寺では、由緒あるご尊像を宗派に拘束されずに、その寺院のご本尊としておまつりしている場合もあります。西国三十三カ所や新西国三十三カ所の観音霊場はそのよい例です。

ご本尊の違いは、教義の違いということでもあります。仏教の求める理想は究極では同じでも、その方法論には各宗派でかなり違いがみられます。

わが国に存在する宗派は五百数十ともいわれますが、ここでは、主な宗派のご本尊を紹介しましょう。なお、新しくご本尊をお迎えしようとするときは、必ず菩提寺または旦那寺で、ご住職と相談してからにしてください。

各宗派のご本尊

〈天台宗(てんだいしゅう)
☆本尊=釈迦牟尼仏(しゃかむにぶつ)

実在としてではなく、法華経「如来寿量品(にょらいじゅりょうぼん)」に説かれている、久遠実成(くおんじつじょう)の釈迦如来をご本尊とします。しかし、どんな仏さまをも本仏(ほんぶつ)のあらわれとして敬う宗旨の教えにより、それにこだわらず、阿弥陀如来や薬師如来、観音菩薩、不動明王、毘沙門天なを本尊としておまつりすることも多くみられます。脇侍としては、向かって右に天台大師(智顗(ちぎ))、左に伝教大師(最澄)の絵像掛軸を掛けます。

〈真言宗(しんごんしゅう)〉(各派とも)
☆本尊=大日如来

密教教典の「大日経」に基づいています。脇侍としては、本尊に向かって右に弘法大師(こうぼうだいし)(豊山派は光明曼荼羅(こうみょうまんだら)、智山派は、不動明王、観音菩薩、地蔵菩薩など)、左に不動明王(ふどうみょうおう)(智山派では興教大師(こうぎょうだいし))をおまつりします。

〈浄土宗(じょうどしゅう)
☆本尊=阿弥陀如来の立像(主として在家)か座像(主として寺院)

浄土三部経によっています。立像は、舟形光背(ふながたこうはい)が多く、昔は阿弥陀三尊(向って本尊阿弥陀仏の右に観世音菩薩(かんぜおんぼさつ)、左に勢至菩薩(せいしぼさつ)を配した)を正面におまつりしていました。右に高祖(こうそ)・善導大師(ぜんどうだいし)、左に宗祖(しゅうそ)・法然上人(ほうねんしょうにん)(円光師(えんこうだいし))像をお掛けします。

〈浄土真宗(じょうどしんしゅう)〉(各派とも)
☆本尊=阿弥陀如来(あみだにょらい)の立像

一般家庭では絵像の掛軸ですが、「南無阿弥陀仏(なむあみだぶつ)」の六字名号の場合もあります。向かって本尊の右に親鸞聖人(しんらんしょうにん)、左に蓮如上人(れんにょしょうにん)―――(本願寺派)を、または向かっ本尊の右に十字名号「帰命尽十方無碍光如来(みょうじんじっぽうむげこうにょらい)」、左に九字名号「南無不可思議光如来(なむふかしぎこうにょらい)」―――(大谷派)をお掛けします。最近では本願寺派も名号軸をおまつりすることが多いようです。

真宗では、ご本尊は本山よりお受けすることに定まっています。自分が門徒(もんと)として属する旦那寺(だんなでら)が、はっきりしていなければなりません。

●真宗での絵像掛軸の大きさ(寸法は、お軸全体の長さ)である「代」の呼称は、昔一文銭が五十枚で「五十代」、百枚で「百代」の絵像掛軸が下付されたことによります。
〈臨済宗(りんざいしゅう)
☆本尊=釈迦牟尼仏

脇寺は各派によって多少ちがいますが、右に達磨大師(だるまだいし)、左に臨済大師もしくは観世音菩薩の絵像掛軸を掛けるのが多いようです。

〈曹洞宗(そうとうしゅう)
☆本尊=釈迦牟尼仏

大恩教主・本師としての歴史上実在のお釈迦さまをご本尊に仰ぎます。

正式の曹洞宗ご本尊釈迦牟尼仏は、菩提寺を通してのみお受けすることができます。向かって本尊の右に高祖(こうそ)・承陽大師(じょうようだいし)、左に太祖(たいそ)・常済大師(じょうさいだいし)を配して、「一仏両祖(いちぶつりょうそ)」としておまつりします。一仏両祖を一本とした掛もあります。また以前は、多くの家で、右に達磨大師(だるまだいし)、左に高祖太祖をおまつりする方法もとらえていました。

〈日蓮宗(にちれんしゅう)
☆本尊=本門の本尊

その表現方法として、久遠の本師・釈迦牟尼仏であったり、「十界曼荼羅(じゅっかいまんだら)」や三宝尊(向かって右から多宝如来、「南無妙法蓮華経」のお題目、釈迦牟尼仏)であったりします。十界曼荼羅(まんだら)は日蓮聖人の所顕で「大曼荼羅(まんだら)」ともいわれ、釈尊の教えの根本を図示したものです。向かって本尊の右に鬼子母神(きしもじん)、左に大黒天の絵像掛軸を掛けたりします(法華宗は左右逆)。その前には、宗祖・日蓮聖人(にちれんしょうにん)をおまつりします。

〈融通念仏宗(ゆうづうねんぶつしゅう)
☆本尊=十一尊天得如来(てんとくにょらい)

脇寺は、本尊に向かって右に、元(がん)祖・聖翁大師(良忍上人(りょうにんしょうにん))、左に中祖(ちゅうそ)・法明(ほうみょう)上人をおまつりし、浄土門の最古参として今に伝えています。

必ずお魂入れを―「開眼供養」「お性根入れ」

お仏壇に安置しておまつりする仏像や掛軸、位牌には、初めにお経をあげて「お魂入れ」の開眼供養をしてからおまつりします。

仏さまは、三十二相(そう)八十種好(しゅごう)という常人とは異なった優れた特性を備えておられます。この三十二相のうち三十一相までは頭頂が盛り上がって二段になったり、耳が大きくて長いことや、眉間に心の眼をあらわす白亳(びゃくごう)相があるとか、手に水かきのようなものを備えておられるというような肉体的特徴は、像につくることはできますが、ただ一つ「梵音深遠相(ぼんのんじんのんそう)」という仏さまのすぐれたお説法の声の特相だけはつくることができません。したがって、どんなにすぐれた像をつくったとしても、三十二相を備えた仏像をつくることはできないのです。

仏さまのすぐれたお説法の声とは、とりもなおさずお経を読誦(どくじゅ)すること、そのことに尽きます。お坊さまによる開眼法要の読経により、この「梵音深遠相」は完成します。像がご仏像となり、これを通して仏さまを拝むことができるようになるのです。

仏さまのはたらきを備え、開眼供養されたご仏像は、粗末にしてはなりません。私たちに拝む心がなければ、仏さまとしてはたらいてはくださいません。ですから、転宅や修理など何らかの事情でご仏像が粗末になるようなときは、お坊さまにお願いして、ご仏像などに宿っておられる仏さまの「こころ」を一時お還りになっていただくように祈念して、ご仏像としての「はたらき」を一時休んでいただくようにお願いしましょう。これを「お魂抜き」「お性根抜き」と呼びます。

古いお仏壇をどうするか―「揆遣(はっけん)」「お魂抜き」「お性根抜き」

お仏壇を買い換えた場合、まず菩提寺に相談されるとよいのですが、遠くに離れていたりしてすぐできないときは、近くのお寺で、古くなったお仏壇やお位牌の「お魂(たましい)抜き」のご供養をお願いすればよいと思います。

廃棄しなければならない場合は、仏壇屋さんに頼んで、お坊さまにより「お性根(しょうね)抜き」の法要を行った上で焼却してもらいます。これを「お焚(た)き上(あ)げ」といいます。

開眼法要のお供え

●紅白の鏡餅(もしくは重餅)
●鯛の焼物と献酒
●燈燭(朱ろうそく一対、白ろうそく一対)
○香(線香、抹香)
○華(常花一対、花籠一対)
○湯
○菓
○茶
○珍膳
○乾菜(乾物)
○生菜(果物)
○菓子折
※●印のものは開眼法要に特別に必要なものです。
合掌
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