●お花/供花(きょうか)の表は礼拝者の方に。
新しい生気のあるものを、ご本尊に向かって左側に、花瓶にいけてお供えします。もっとも、花瓶が二つのときは左右にお灯明の外側にお供えします。
つい最近までは、仏さまへの供花は、各家それぞれにお花を育てて、その最も美しい時節、四季折々にお仏壇へお供えしたものです。
お寺の大法要などで、お坊さまが紙の花びらをまかれることがあります。これは散華(さんげ)といって、その場を清めるとともに、仏さまをお供養する儀式です。
美しいお花は、人の心をなごませ、清浄な気持ちにします。お花のような美しい心で、み仏のお徳を讃嘆(さんたん)し、また、その美しさからお浄土の風光を仰がせていただくことが大切です。
このように仏さまにお花をお供えすることは、仏さまの荘厳であると同時に、捧げた者が、仏さまから、お荘厳をいただくことです。仏さまに美しいお花を差し上げようという、その心はそのまま仏さまの心として、差し上げる者に働きかけるのです。これを回向遍照(えこうへんじょう)といいます。
お花がお参りする人の方に向けられているのはそのためです。ですからどんなに美しくても、トゲのある樹の花や臭い花、辛くにがい花、木槿(むくげ)の花やバラなどは避けるようにと、昔から伝えられています。
なるべく美しく、新しく生気あるものをお供えするようにしましょう。もちろん花瓶の水を入れ替えて、しぼんだ花や枯れた花にならないように心がけましょう。仏さまを常に念じ、お供養する心があるなら、しぼんだ花をそのままにしておくはずがありません。いつもすがすがしい気持ちで拝めるようにしましょう。お花はあなたの心を映しているのです。
ところで、お寺のご本尊さまの前に飾られている金色の蓮華(れんげ)は、「常花(じょうか)」、あるいは、「金木華(きんもっか)」といい、つぼみと花と実がすべて備わって、過去、現在、未来の三世(さんぜ)の相(すがた)をあらわしているとともに、経文にあるところの金色に輝く浄土をあらわしています。この蓮華の花組みは「立花(りっか)」と呼ばれ、室町時代からの華道の形式になり、中心に立つ花は「しん」と呼ばれて、仏、神の宿る場を意味するようになりました。
仏教における供花の第一は、蓮華であるとされています。蓮華の花は開いているとき(因)に、すでに花の中に実を結んでいる棄(果)ことから、凡夫も仏性を具えているということを象徴している花として尊重されているのです。寒いからといって京都北山の杉はその場を逃げ出したりはしません。お花は自然の変化によく耐えるところから、お花を供えるのは忍辱(にんにく)行をあらわすものであるともいわれます。
また、樒(しきみ)は、インドから中国に伝えられ、さらに、奈良時代に鑑真和上(がんじんわじょう)が経巻や他の文物類とともにわが国に持ってきたと伝えられるもので、これはインドの無熱池(むねっち)にある青蓮華(しょうれんげ)にその葉の形が似ているそうです。
また、この樒のにおいとその実の毒性は、大切なものを外敵から護る働きがあると考えられ、葬儀においてなくてはならない魔除けの「緑切り花」となりました。